
ハイブリッドを発明したのはオーストリアのポルシェ博士でした。
そのハイブリッドシステムが日本では随分とスタンダードになってきました。
しかし、世界的にみるとまだまだのようです。
欧州メーカなどは効率の良いストロングハイブリッドが作れず、
マイルドハイブリッドが主流となっています。
先ごろトヨタは電動化に関する保有特許を無償で提供すると発表しました。
トヨタの言い分によればトヨタのハイブリッドシステムを
そのまま載せたいというメーカーからの要望が相次いでいる為ということです。
しかし本当の理由はトヨタのオープンな姿勢を世の中に示すことのようです。
今回はハイブリッドでは優位に立っている日本メーカーのハイブリッド方式について
まとめてみました。
目次
ハイブリッド方式
ハイブリッドが搭載されているクルマの諸元表にはモーターに関する記載があります。
エンジンと同じように出力やトルク値が記載されていますが、
大きいほど良いハイブリッドなのでしょうか?

ハイブリッド車のエンジンとモーターのスペック一覧 | ||
トヨタ | プリウス | レクサスLC |
エンジン最高出力 | 98ps | 299ps |
エンジン最大トルク | 14.5kgm | 36.6kgm |
モーター最高出力 | 72ps | 180ps |
モーター最大トルク | 16.6kgm | 30.6kgm |
ハイブリッド方式 | スプリット | スプリット |
システム出力 | 122ps | 359ps |
ハイブリッド車のエンジンとモーターのスペック一覧 | ||
ホンダ | フィット | ステップワゴンスパーダHV |
エンジン最高出力 | 110ps | 145ps |
エンジン最大トルク | 13.7kgm | 17.8kgm |
モーター最高出力 | 29.5ps | 184ps |
モーター最大トルク | 16.3kgm | 32.1kgm |
ハイブリッド方式 | パラレル | シリーズ パラレル |
システム出力 | 137ps | 184ps |

ハイブリッド車のエンジンとモーターのスペック一覧 | ||
ニッサン | エクストレイル | ノートe-POWER |
エンジン最高出力 | 147ps | 79ps |
エンジン最大トルク | 21.1kgm | 10.5kgm |
モーター最高出力 | 41ps | 109ps |
モーター最大トルク | 16.3kgm | 25.9kgm |
ハイブリッド方式 | パラレル | シリーズ |
システム出力 | 182ps | – |

ハイブリッド車のエンジンとモーターのスペック一覧 | ||
スズキ | スイフトストロングHV | スイフトマイルドHV |
エンジン最高出力 | 91ps | 91ps |
エンジン最大トルク | 12.0kgm | 12.0kgm |
モーター最高出力 | 13.6ps | 3.1ps |
モーター最大トルク | 3.1kgm | 5.1kgm |
ハイブリッド方式 | パラレル | マイルド |
システム出力 | – | – |
シリーズハイブリッド

モーターのパワー、馬力とトルクの値が大きいものがシリーズハイブリッド
と呼ばれています。
シリーズ方式は内燃機関(つまりエンジン)は発電に専念して、
走るのはモーターでのみ行います。
よって大きいクルマだと大きい出力のモーターを積まなければならなくなります。
ニッサンのe-POWERが代表的です。
パラレルハイブリッド
モータのパワーが小さく見えるものは、エンジンとモーターを同時に使い、
パラレルハイブリッドと呼ばれています。
ホンダのフィットやヴェゼル、ニッサンのスカイラインなどが採用しています。
パラレル式の場合、エンジンが100馬力でモーターが70馬力の場合、
およそ170馬力がクルマの出力になります。
だから、モーターはそんなに大きい必要がありません。
シリーズ式で同じ170馬力の出力を出そうとするとモータだけでその出力を
出さなければいけないため、モータは必然的に大きくなります。
スプリットハイブリッド

トヨタのTHSⅡが代表です。というかこれしかありません。ある時はシリーズ的な動きをし、ある時はパラレル的な動きをする変幻自在のシステムです。
では、ここからは各メーカーのハイブリッドについて紹介しましょう。
トヨタ
THSⅡ

THSⅡはトルク分割機構の仕組みです。
やじろべえのようなものが真ん中にあり、片側にモーター、もう片側にエンジンがあり、
バランスを取っている感じの仕組みです。
初代プリウスが登場したばかりの頃、難しいということで技術解説書が
THSについて解説していたそうです。
その本ではシーソーを使って説明していました。
シーソーはどちらかが重いと傾きます。
それと同じようにエンジンの回転が上がると、エンジン側にシーソーが傾きます。
するとモーター側の電圧を上げて回転数を上げることでバランスをとります。
これによって全体の出力が上がっていきます。
常にエンジンとモーターはシーソーの上でバランスをとっています。
弱点はエンジンだけチューニングができないことです。
エンジン出力を上げればバランスをとるためにその分モーターも
大きくしなければなりません。
一見効率が悪そうですが、実は抜群に効率が良いです。
エンジンは発電機を回して電気を作り、
その電気でモーターを回して駆動にトルクを送ります。
もう一方で、エンジンは駆動にも直接トルクも送っています。
もう一つの弱点はスポーティーな走りが苦手な点です。
エンジンだけならパワーアップはそれほど難しくないですが、
THSはモーターとバランスを取る必要がある以上、簡単にできません。
但し、トヨタも対策をしています。
レクサスLCやLSのマルチステージハイブリッドには、モーター側に4速ATを入れました。
これはどういうことかと言うと、エンジンを大きくすると、バランスを取るために
モーターも大きくしないといけません。
しかし、モーター側にトランスミッションを入れてトルクを増力させることで、
エンジンのトルクが大きくなってもモーターが対応できるようにしました。
このようにモーター側にATを入れたのは高回転な小型モーターを大きくせずに
ATの減速ギアを使ってトルクを上げることで大きなエンジンとのバランスをとる
ということです。
ホンダ
i-DCD

ホンダのi-DCDは発電用と駆動用を兼ねた1モーターのパラレル式です。DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の奇数段にモーターをつないでいます。
エンジンが主役なのでスポーティーでかつ、モーターアシストもちゃんとあります。
しかも燃費がいいです。
i-MMD
i-MMDは発電用と駆動用に2つのモーターを搭載するシリーズに近いパラレル式です。
プリウスなみに効率が良いのですが、オデッセイハイブリッドやCR-Vなど、
2ℓはエンジンが回り出すと急にうるさくなります。
しかし、1.5ℓのインサイトはエンジンが動いても静かで存在を感じさせません。
ニッサン
e-POWER

ニッサンのストロングハイブリッドは重量のある
比較的大きなエンジンを積んだクルマにマッチする1モーターの
パラレルハイブリットシステムです。
これをノートクラスに採用すると効率が良くありません。
そこで、リーフのEVシステムを活用してシリーズハイブリッド化したのが
e-POWERになります。
ストロングハイブリッドはモーターの存在感がうすく、
高級なアイドリングストップシステムのようなものです。
一方、e-POWERは走る部分はまるまるEVのため、ワンペダルドライブが楽しめます。
スズキ
ストロングハイブリッド・マイルドハイブリッド

スズキのほとんどはマイルドハイブリッドです。マイルドハイブリッドはスターターモーター機能と発電機能のあるISGというモーターを搭載します。
一方、ストロングハイブリッドはISGのほかに、MGUという駆動用モーターを搭載する2モーターのパラレル式です。シングルクラッチAMTの2モーターストロングハイブリッドを出しました。
シングルクラッチAMTは低コストのATです。
シングルクラッチの場合、クラッチの切れた際のトルク切れモーターで補うのが
スズキのストロングハイブリッドです。
低価格で実現できるのが魅力です。
これは普通のハイブリッドではなく、シングルクラッチAMTの
進化バージョンと考えたほうが良いです。シングルクラッチAMTはシフトアップのたびにスピードが緩んでしまいますが、そこをモーターで補い、なめらかにします。ある程度のEV走行も可能です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
では、またの機会にお会いしましょう。