脂質異常症について知っておきたい5つのこと。

職場や地域の健康診断や人間ドックなどで見つかる「異常」で最も多いのが
コレステロール値や中性脂肪値の異常です。
これらは「脂質異常症」と呼ばれています。
コレステロールや中性脂肪は脂質、つまり「あぶら」の一種です。
血液中に脂質が多くても、少なくても、それだけでは何の自覚症状もありません。
だからといって異常な状態をそのままにしておけば身体の中、
特に動脈がむしばまれていく恐れが高まります。
脂質異常症は動脈硬化を進め、心筋梗塞をはじめとする各種の
血管病を引き起こす大きな要因となります。

脂質異常症はこの呼び名になるまでは「高脂血症」と呼ばれていました。
これは脂質、特にコレステロール値の高さを問題にした呼び名でした。
しかし、血液中のコレステロールには、肝臓から血管を通って
身体のすみずみに運ばれていく途中のものもあれば、
回収されて肝臓に戻っていく途中のものもあります。
前者は血管に溜まりやすい、いわゆる「悪玉」でLDLコレステロールが代表的です。
後者はいわゆる「善玉」のHDLコレステロールです。
HDLコレステロール値は低すぎることの方が問題となります。
「高脂血症」という呼び名はこの問題について反映できていないことから、
2007年以降、「脂質異常症」と呼ばれるようになりました。

脂質異常症といってもタイプが色々あります。
最近ではLDLだけではなく、HFL以外のすべてのコレステロール
(non-HDLコレステロール)の量を示す値も
新たな指標として用いられるようになってきました。

血中脂質の「異常」の意味

健康診断や人間ドックを受けた人の3人に1人は、血中脂質の異常が見られるそうです。
差し迫った危険性を感じにくいですが、「よくあること」と放置しておくのは危険です。
検査数値の異常が何を示し、どんな病気の恐れがあるのかをきちんと理解しておきましょう。

血中脂質とは

血中脂質とは血液中に溶け込んだ各種の「脂」のことです。
血液検査の項目にある各種のコレステロールや中性脂肪は、脂質の一種です。
血液に溶け込んで身体のすみずみに運ばれ、活用されています。

ありすぎても困るが、無くても困る

コレステロールや中性脂肪は、悪者扱いされがちですが、
コレステロールは身体に必要なものをつくる材料として欠かすことが出来ないものです。
また、中性脂肪は身体を動かすエネルギー源などとして利用されています。
したがって無くなっては困るものです。しかし、量が多すぎるのも問題です。
血中脂質が増えるほど心筋梗塞など、
致命的な病気が起きる危険性が高まってしまうからです。

脂質の種類は4つ

  1. コレステロール
    ・細胞の膜を作る成分
    ・ステロイドホルモンの材料
    ・脂肪の消化・吸収を助ける胆汁酸の材料
    ※脂肪酸と結合したコレステロールエステルと結合していない
     遊離コレステロールがある
  2. 中性脂肪
    ・エネルギーとして使われる脂肪酸を運ぶ
    ・身体にたまれば、体温を保ったり、内臓を保護したりする役目も果たす
  3. 脂肪酸
    ・中性脂肪が分解され、血液中に放出された遊離脂肪酸は、エネルギー
     として使われる
    ・身体の機能を正常に保つ働きもある
    ・リン脂質やコレステロールの一部にもなる
    ・グリセロールという物質と3つの脂肪酸がつながって中性脂肪になる
  4. リン脂質
    ・細胞の膜を作る成分
    ・水と油脂の中間的な性質(水にも油脂にもなじみやすい)

脂質は生きていくために欠かせない成分でもあります。コレステロールや中性脂肪そのものは水に溶けずに分離してしまうため、「リポたんぱく」というカプセルのようなものに入っています。

脂質の運び役、リポたんぱく

血液中のコレステロールや中性脂肪は、水になじみやすい性質をもつリン脂質や、たんぱく質の一種であるアポたんぱくの膜に包まれて存在しています。このかたまりがリポたんぱくです。いくつかの種類がありますが、基本的な構造はいずれも同じです。直径は、いちばん小さなものが7.5ナノメートルほど、大きなものは1000ナノメートルほどです。
※1ナノメートルは1ミリの100万分の1

糖質やたんぱく質も血中脂質の材料になる

血中脂質の原料は毎日の食事です。原料になるものは「あぶらっこいもの」ばかりではありません。糖質やたんぱく質を十分にとっていれば、体内でコレステロールや中性脂肪は作り出されます。

コレステロールの七割は肝臓で合成されている

血液中の脂質は、食物を消化して得られた栄養素を原料に体内で作り直されたものです。
食物中の脂質は、原料の一つです。

身体が必要とするコレステロールの量は一日1~2グラムほどですが、
通常その七割ほどは肝臓で合成されています。
また、糖質やたんぱく質が余れば中性脂肪に作り替えられ、
必要に応じてエネルギー源として活用されます。

こうした身体に必要な物を作り出し、利用する働きを「代謝」といいます。
脂質の代謝は複雑ですが、大まかには以下の通りです。

脂質異常症とは

異常は血液検査の四つの項目に現れる

血液検査の結果が返ってきたら、四つの検査項目に注目しましょう。
コレステロールはLDL、non-HDL、そしてHDLに分けて結果が示されます。
中性脂肪はトリグリセライドと表記されることもあります。

脂質異常症の診断基準

血中脂質の量に異常がみられる状態を「脂質異常症」といいます。
血液検査の結果が下記の基準に1つでも当てはまれば、脂質異常症とされます。

検査項目に「総コレステロール」が含まれていることもありますが、
日本動脈硬化学会では、総コレステロール値のみの診断基準は設けていません。

LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
トリグリセライド(中性脂肪) 150mg/dL以上 高トリグリセライド血症

non-HDL
コレステロール
(総コレステロールーHDLコレステロール)

170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症

non-HDLコレステロールは、一般的な検査項目として
用いられるようになってきた新しい指標です。
特定検診では、中性脂肪値が高い場合(400mg/dL)や食後すぐの採決時に、
LDLコレステロールのかわりにnon-HDLコレステロールを測定することがあります。

「異常」の放置は動脈硬化を進める要因に

血液中に余分なコレステロールがたくさんあると、
血管の壁にたまって動脈硬化を進めやすくなります。
中性脂肪も、増えすぎれば間接的に動脈硬化を進めるおそれがあります。

脂質異常症の診断基準は「なんらかの対策が必要な人」を探し出すためのものです。
たとえば早く服薬を始めたほうが良いか、生活改善を心がけるだけでよいかなど、
人によってとるべき対策の中身は違ってきます。
しかし、いずれにしても「異常がある」のですから放置は禁物です。

このままでは人並み以上に動脈硬化が進んでしまいます。
異常とも正常とも言いにくい境界域に当てはまる場合も、高血圧や糖尿病、
喫煙習慣などの危険因子をかかえていれば同様の危険性があります。

HDLの少なすぎも危険!LDLとHDLの比の確認を

LDLコレステロール値は正常の範囲内でも、HDLコレステロール値が低すぎると、血液中の余分なコレステロールを回収しきれません。血管にたまりやすく、動脈硬化が進むリスクが高くなります。

LH比 = LDLコレステロール/HDLコレステロール
  1.5以下:コレステロールはたまりにくい
  2.0以上:動脈硬化が疑われる
  2.5以上:心筋梗塞のリスクが高まる

コレステロール値の異常

「低いより高いほうがまし」という思い込みは危険

「コレステロール値は高めのほうが長生き」などという話を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。しかし、「ならばLDLコレステロール値が高くても治療は不要」などと、生半可な理解で決めつけるのは危険です。

「高コレステロールの治療は不要」は大きな誤解

血中のコレステロールは、多すぎても少なすぎても死亡率が高まります。そのため、コレステロール値を下げて良いのかと心配する声も聞かれます。

しかし、栄養が不足していたり、肝臓の病気などをかかえていたりすれば、
血中脂質は減ります。
低コレステロールだから死亡率が高まるのではなく、
もともと健康状態が悪化している人も少なくないのです。
過剰なLDLコレステロールを減らす治療を受けた結果、
低値になった人の死亡率が高まるというデータはなく、
致命的な冠動脈疾患が減るというメリットのほうが大きいといえます。

HDL以外は増えすぎ、HDLは減りすぎに注意

HDLコレステロールは「善玉」、LDLコレステロールは「悪玉」として知られますが、血管壁にたまる悪玉はほかにもあります。善玉以外、すべての悪玉を含む数値がnon-HDLコレステロール値です。

数は少ないがLDL以上に危険な「超悪玉」

血中脂質のうち、動脈硬化を進める最大の要因となるのはLDLコレステロールです。
しかし、レムナントや小型のLDLは数は少ないものの通常のLDL以上に
動脈硬化を引き起こしやすい性質があります。
これら「超悪玉」に含まれるコレステロールも含めて、
血管にたまりやすいコレステロールがどれくらいあるかを示すのが、
non-HDLコレステロール値です。

血液検査でLDLコレステロール値のかわりにnon-HDLコレステロール値が
示されることもありますし、あるいは両方を示されることもあります。

超悪玉も含めて数値化できる

LDLコレステロール値は、以前は技術的に正確な測定がむずかしく、
正確性の高い総コレステロール値、HDLコレステロール値、
中性脂肪から計算して求めるのが一般的でした。
しかし、中性脂肪値が高いと誤差が大きくなることから、中性脂肪値を入れずに算出できるnon-HDLコレステロール値が注目されるようになったのです。

現在はLDLコレステロールそのものの量を直接、正確に測れるようになりましたが、
レムナントなども含めて評価できるという点でnon-HDLコレステロール値は
優れた指標と言えます。

中性脂肪値の異常

中性脂肪の増えすぎで起きる問題も多い

血管の壁にたまるのは余分なコレステロールで、中性脂肪そのものではありません。
しかし、増えすぎれば動脈硬化を進めたり、さまざまな病気を引き起こしたりします。

飲み過ぎ、食べすぎが最大の原因に

中性脂肪値(トリグリセライド値)が高くなる原因の大半は、
食べ過ぎや飲みすぎによるもの。
脂肪分の多いものを控えても糖質やたんぱく質をたっぷりとっていれば、
余ったエネルギーは中性脂肪に変換され、脂肪組織にため込まれていきます。
その過程で、血液中に中性脂肪があふれかえることになるのです。

中性脂肪値が高い人は、概して太り気味。脂肪組織にたっぷり脂肪が詰まっています。
実はこの身体の組織にたまった脂肪には動脈硬化を進める働きがあります。

脂質異常症のひとつであり、対策が必要な状態であることを、
しっかり認識しておきましょう。

脂質異常症が起きる原因

生活習慣の影響は大きいが、それだけではない

コレステロール値や中性脂肪値の異常は、生活習慣の影響で起きてくることが多いもの。
但し、体質や年齢、持病や常用している薬剤の影響も見逃せません。

自分に関係することはなにかを考えておく

HDL以外のコレステロール値や中性脂肪値が高くなりすぎたり、
HDLコレステロール値が低くなりすぎたりする背景には、
たいていの場合、好ましくない生活習慣があります。

ただ、脂質異常症が起きる原因は複合的です。
体質的に脂質異常を起こしやすい人は、生活面の問題が少しあるだけでも
異常が現れるおそれがあります。
逆に、体質的な問題があっても、生活面に注意することで、
良い状態を維持できる可能性もあります。

自分に関係することはなにか、ふり返って考えておきましょう。

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